大学プレスリリース2023.12.05

大阪大学大学院生命機能研究科・中村拓人助教(理学研究科兼任)、木村真一教授(理学研究科兼任、自然科学研究機構分子科学研究所教授)らの研究グループは、電子間の多体効果である近藤効果により伝導電子の有効質量が増大する「重い電子」を、原子一層の厚みしか持たない単原子層物質において初めて実現しました。本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、12月1日(金)午後7時(日本時間)に公開されました。
【研究成果のポイント】
◆低温で金属の電気抵抗は下がるが、不純物がわずかにあると逆に抵抗が上がる現象が知られている。これは電流を担う「電子が動きにくくなる」ためであり、「近藤効果※1」と呼ばれている。近藤効果が各格子点で発生すると、「動きにくい電子」が動き出し、あたかも有効質量が大きくなった電子のように振る舞う「重い電子※2」状態が出現する。
◆「重い電子」は、3次元的に広がっている物質(通常の固体)で生じることが知られていたが、単原子層でできた「二次元」面内でも実現することを、実験で初めて確認した。
◆炭素が二次元的に広がるグラフェンやカーボンナノチューブのように、面的構造の物質は全く新しい物性を示すことがある。今回の成果が加わることで、従来の理論で説明できない超伝導の解明や量子コンピューター開発への応用が期待される。