学寮潜入!大学寮レポート2025.12.16

全学生の9割以上がキャンパス内で共に暮らす、国際教養大学(AIU)。
「24時間リベラルアーツ」を掲げるこの学びの場は、日々進化し続けています。
2023年春に全面リニューアルを完了した「こまち寮」、
そして学生の自主運営によって多様な価値観と触れ合う「テーマ別ハウス」。
進化を続ける寮教育(レジデンシャル・エデュケーション)の現在地を、
3年ぶりの現地取材でレポートします。
本記事(前半)では、大学職員さまへの取材をもとに、新しくなった施設と寮制度の最新状況をご紹介。
後半記事では、実際に寮運営に関わるRA(レジデント・アシスタント)の学生たちにインタビューし、AIUでのリアルな暮らしと成長の物語に迫ります。

国際教養大学(Akita International University, 略称AIU)は、2004年に秋田市に設立された公立大学。日本初の地方独立行政法人が運営する単科大学として開学し、徹底した国際教養教育を展開しています。
理念は「外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養を備え、国際社会と地域社会に貢献する人材の育成」であり、グローバルリーダーの育成を目指しています。
最大の特徴は「24時間365日学べる環境」。講義棟、図書館、学生寮、学生宿舎がすべてキャンパス敷地内に集約され、図書館やコンピュータルームは24時間365日利用可能です。授業はほぼすべて英語で行われ、1年間の海外留学も必須となっています。

AIUでは1年次の寮生活が義務化されており、新入生全員が「こまち寮」に入寮します。その後も多くの学生がキャンパス内の学生宿舎に移り住み、結果として約91%の学生がキャンパス内で生活しています。
この寮生活は単なる居住空間の提供ではありません。日本人と留学生が共に暮らし、日常的な国際交流を通じて社会性や問題解決能力を磨く、AIU教育の根幹を成すシステムとなっているのです。
「こまち寮」は、新入生が最初の1年間を過ごす男女混住型の学生寮です。
2023年春の全面リニューアルにより、居住環境が大幅にアップデートされました。

寮棟は、講義棟や図書館などの主要施設と「屋根付きの渡り廊下」で直結しています。そのため、雨の日や雪深い冬の時期でも、天候や季節を問わず快適にキャンパス内を移動できる設計となっています。
居室は、基本的に「2人部屋」です。全国から集まった学生や留学生と共同生活をします。室内にはロフトベッド、机、クローゼットなどが機能的に配置され、限られたスペースの中で互いの気配を感じながらも、効率よく生活できる工夫が施されています。


こまち寮での生活は、健康管理とコミュニティ形成の観点から「ミールプラン」への加入が必須となっており、春学期・秋学期の期間中はカフェテリアで1日3食が提供されます。

「こまち寮の家賃は、年間約35万円で、これには光熱水費、インターネット使用量が含まれています。また、ミールプラン(食費)は、年間約25万円です。(金額は2025年度目安)」
日本全国から集まる学生に加え、世界各国からの留学生も同じ屋根の下で生活するため、寮内では日常的に国際交流が生まれます。

文化や習慣の異なるルームメイトと暮らし、直面する課題を仲間や教職員と協力して解決していく経験。これこそが、AIUが重視する「レジデンシャル・エデュケーション(寮教育)」の重要な要素となっています。
こまち寮での1年間を終えた学生は、「グローバルヴィレッジ」「さくらヴィレッジ」「つばきヴィレッジ」などの学生宿舎へ移ります。なかでも「つばきヴィレッジ」は、12室のユニット制の定員255名で、バリアフリー対応も完備されている2022年新設の寮です。

ここで行われているユニークな取り組みが「テーマ別ハウス」です。
これは2015年に文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」の一環としてスタートした制度で、現在は大学の独自予算によって継続運営されています。
大きな特徴として、テーマは固定されていない、ということが挙げられます。
ハウスのテーマは年度ごとに学生や教員から企画を募り、その提案に基づいて決定されます。承認されたテーマのもと、共通の関心事を持つメンバー(日本人学生と留学生)が集まり、同じユニットで共同生活をスタート。大学から活動費の助成を受けながら、セミナーやイベントを自ら企画・運営し、生活の中で学びを深めていきます。
| ハウス名 | 活動内容 |
|---|---|
| ウェルビーイングハウス | ヨガや瞑想、アートを通じて心身の健康を探究 |
| 日本語ハウス | 留学生と日本語学習者が交流し、日本語教育や文化体験を実施 |
| 多言語学習ハウス | 複数言語を学ぶ学生が集まり、初心者向けレクチャーやグループ学習を展開 |
| 刑事司法ハウス | 刑務所や司法制度に関する学習会を開催 |
| 先住民学ハウス | 伝統文化イベント(例:メキシコの「死者の日」)を企画 |
| マイグレーションハウス | 移民や国際社会の課題をテーマに議論 |
| ロシア語・スラブ文化ハウス | 言語学習や文化交流を中心に活動 |
寮生活を支えているのが、RA(レジデント・アシスタント)制度です。
寮生活を経験した先輩学生がRAとして、新入生の生活相談やイベント企画を通じてコミュニティを活性化させています。
AIUの寮制度は、ハード面のリニューアルと、学生主体の運営という両輪で進化を続けています。それは単なる「住む場所」を超えた、グローバル人材育成の実験場 ー それがAIUの寮なのです。
実際にRAとして活動する学生たちは、どのような思いで寮運営に携わっているのか。続く後半で、RAを務める学生たちの生の声をお届けします。
