学寮潜入!大学寮レポート2025.12.16

前半記事:国際教養大学の寮制度を徹底解説!施設リニューアルやテーマ別ハウスの取り組み
すべての新入生が寮生活を送る国際教養大学(AIU)。その寮コミュニティを支える重要な役目を担っているのが、RA(レジデント・アシスタント)の存在です。
前半記事では、2023年にリニューアルされた「こまち寮」やユニークな「テーマ別ハウス」などの取り組みなど、最新の寮制度についてレポートしました。
後半では、その独自性あふれるコミュニティを最前線で支えるRA(レジデント・アシスタント)の学生たちにフォーカス。
「実家が世界のハブだった」というユニークな生い立ちから、RAチーム運営での「ぶっちゃけ大会」、そしてプライベートの切り替え術まで。AIU生のリアルな生態と成長の軌跡を、本音で語っていただきました。
※AIUの寮制度や施設の詳細については、[こちらの記事]でもご紹介しています。 今回は、その寮生活を支えるRA学生たちの「生の声」をお届けします。
インタビューに協力してくれたRAのお2人。
左:斎藤さん(国際教養大学4年、神奈川県出身)
右:船橋さん(国際教養大学3年、香川県出身)
ーーー まずは、お二人がAIUを選んだきっかけから教えてください。
関東と四国、出身も背景も全く違いますよね。
斎藤(4年): 私は母が英語教諭だったこともあって、実家がよくホームパーティーの会場になっていたんです 。オーストラリアやアフリカなど、世界中から人が集まる「世界のハブ」みたいな家で育ちました 。
ーーー それはすごい環境ですね!
斎藤: 幼い頃からそんな環境だったので、「世界を見てみたい」という思いが強くて 。中学2年生の時に初めてホームステイに行ったんですが、そこがお風呂がなくて「トイレのバケツでシャワーを浴びる」ような場所だったんです 。

ーーー いきなりハードな体験ですね……!
斎藤: でも、ショックを受けるどころか「逆に面白い!」って楽しめちゃって 。そんな私を見て、親から「変人でも馴染めるのは、東京の大学より秋田(AIU)の方がいいんじゃない?」と刷り込まれまして(笑) 。自分でも「私の性に合っていそうだな」と納得して第一志望にしました 。
ーーー 「バケツシャワーを楽しめるならAIUも大丈夫」という説得力がありますね(笑)。船橋さんはどうですか?
船橋(3年): 私は逆に、先生に「この成績ならこの大学」とレールを敷かれるのが嫌で、自分で調べてAIUを見つけました 。

ただ、AIUに来る前に通っていた予備校の寮が強烈で……。「朝5時起床で勉強」「門限5時」という、超ストイックな環境だったんです 。
ーーー 門限5時!? 夕方の?
船橋: そうです(笑)。でも、そこですごく優しかった寮母さんに救われたんです 。
厳しい規則の中で「いってらっしゃい」「おかえり」と声をかけてくれる温かさに感動して 。AIUでRAになったのも、「私もあんな風に、みんなのお母さんみたいな存在になりたい」と思ったのが原点なんです。
ーーー 全く違う原点を持つお二人ですが、今はRAとしてどんな寮を作ろうとしているのですか?
斎藤: 私たちのチームでは「コミュニティ・ガーデン(Community Garden)」という目標を掲げています 。管理人が全てを管理するようなスタイルではなく、住んでいるみんなで一緒にお庭(コミュニティ)を育てていこう、というコンセプトです。

ーーー 住む人が主役なんですね。
斎藤: そうです。だから共有キッチンが汚れていてもRAがすぐに掃除をするのではなく、まずは居住者自身が問題に気づいて解決できるように促します。「主体性」や「責任感」を持ってほしいからです。

ーーー 理想的な運営に見えますが、苦労したことはありますか?
斎藤: 正直に言うと、私のチームは一度崩壊しかけました(苦笑) 。メンバー間でタスク量に差が出たり、連絡への反応が薄かったりで、不満が溜まってしまったんです 。
ーーー そこでどう立て直したんですか?
斎藤: 全員集めて「ぶっちゃけ大会」のような場を設けました。「個人攻撃じゃなく、チームのために思っている不満を全部吐き出そう!」って 。ここで全部終わらせる、という約束で始めたんです。一度「膿」を出し切って、お互いの思いを確認したことで、結果的に信頼関係が深まりました 。リーダーとして、良い経験になったと思います 。
船橋: 私は「ウェルビーイング・ハウス」というテーマ別ハウスに住んでいるんですが、日常の何気ない関わりを大切にしています 。
最初は留学生の悩み相談を英語で受けるのが不安だったんですが、一生懸命話すと相手も聞いてくれて、深い意思疎通ができた時に「あ、通じ合えてる」と自信になりました 。
ーーー 寮に住み込みだと、24時間気が休まらないんじゃないですか?
斎藤: そこは意識的に線引きしています。私たちは「RAパーカー」というユニフォームがあるんですが、それを着ている時はどんな相談にも乗ります。でも、着ていない時は完全に「オフ」です 。

ーーー もしパーカーを着ていない時に相談されたら?
斎藤: 例えば近くのバーで飲んでる時とかに「RAじゃん、ちょっと相談が……」って言われても、「ごめん、今はRAじゃないから!」って断ります(笑) 。
船橋: 大事ですよね(笑)。普段は「みんなのお母さん」を目指していますが、自分のケアも大切にしないと潰れちゃうので、私もメリハリをつけるようにしてます 。
ーーー 最後に、AIUでの学びと、これから目指す後輩たちへのメッセージをお願いします。
斎藤: 私はイギリスへ留学し、音楽とテクノロジーを学びました。現地ではプロフェッショナルな教授陣に囲まれて世界が広がりましたね。例えば、プロジェクションマッピングと音楽を掛け合わせている映画監督のような教授がいたり、友人はミュージカルの授業で実際にステージを作り上げて公演したり。専門性の高さに圧倒されました。

AIUは、やりたいことがまだ決まっていなくても大丈夫。「なんでもできそう」だから選んでいいんです。色々な価値観に触れて、大いに進路に迷って、「迷子になれる」場所ですから。
船橋: 私はこれからアメリカへ行き、言葉の壁を超えたコミュニケーションツールを作るために、AIやプログラミングを学ぶ予定です 。

もし周りから「変わってるね」と言われていても、それは大事な個性だと思います。AIUは多様性のある大学なので、その個性を捨てずに、ここで思いっきり解放してほしいなと思います 。
ーーー お二人とも、ありがとうございました!
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