大学プレスリリース2025.03.14
名古屋大学大学院工学研究科および未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所の松尾 豊 教授、大島 久純 特任教授、上岡 直樹 助教らの研究グループは、株式会社デンソーと協力して、単層カーボンナノチューブ薄膜透明電極(CNT電極)を用いた100 cm²サイズのペロブスカイト太陽電池モジュール(CNT-PSCと呼ぶ)の作製に成功しました。ペロブスカイト太陽電池は、次世代太陽電池として注目され、グリーンエネルギー源として実用化が期待されています。CNT電極は化学的に安定であり、酸化や腐食に対し高い耐性をもち、ペロブスカイト太陽電池の最大の問題である耐久性を向上させます。また、CNT電極は高い電子伝導性をもち、薄膜でも効率的な電荷輸送を実現します。さらに、柔軟性に優れているため、フレキシブル基板や曲面へも適用できます。
従来の金属電極は酸化されるという問題があり、ペロブスカイト太陽電池の耐久性に懸念を与えることから代替が検討されています。また、透明ではなく、デザイン性に劣ります。これに対して、CNT電極は光透過性を備え、視覚的に目立たないので、両面からの受光が可能となり、意匠性が優れます。窓に貼ると屋外の光、屋内の光で発電できます。今回のCNT電極は正孔を捕集する電極として用いられており、温和な正孔ドープ材料として、2,2,2-トリフルオロエタノールを用いて性能と耐久性を向上させています。
本研究の成果は、CNT電極がペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上させるゲームチェンジャーとして機能しうることを示しており、将来のCNT-PSCの実用化が期待されます。