大学プレスリリース2025.01.17
名古屋大学大学院工学研究科および未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所の松尾 豊 教授、上岡 直樹 助教らの研究グループは、2,2,2-トリフルオロエタノールを添加した単層カーボンナノチューブ電極がペロブスカイト太陽電池の耐久性を格段に向上させることを見出しました。この太陽電池は、作製時に14.1%のエネルギー変換効率を示していましたが、未封止・大気下で280日間保管した後も8.2%の変換効率を記録しました。一方、従来の銀電極を用いた参照素子は、作製時に16.4%の変換効率を示していましたが、未封止・大気下で260日間保管した時点で、銀電極下のペロブスカイト層が黄色に変色し、変換効率は0%にまで低下していました。解析の結果、2,2,2-トリフルオロエタノールを添加した単層カーボンナノチューブ薄膜を電極として使用した場合、ペロブスカイト結晶の分解が抑制されていることが明らかになりました。
本研究グループではこれまで、単層カーボンナノチューブ電極がペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上することを示し続けてきましたが、フッ素系化合物をカーボンナノチューブ電極に添加することで、耐久性が一層向上することがわかりました。
ペロブスカイト太陽電池の実用化において、耐久性が最大の問題となっており、厳密な封止技術が検討されています。しかし、封止なしでも耐久性があるペロブスカイト太陽電池は、封止を施すことで、さらに実用レベルの耐久性に達する可能性があると期待されます。
本研究成果は、2024年7月14日付で光化学の専門誌『Photochem』のオンライン速報版に掲載されました。