大学プレスリリース2025.02.19
名古屋大学大学院理学研究科の松尾 太郎准教授、三輪 久美子特任助教らの研究グループは、京都大学、東北大学、東京科学大学、龍谷大学との共同研究で、地球と光合成生物のやり取り(共進化)を通して見えてきた、シアノバクテリアの光アンテナの初期進化とそれを牽引した「緑の海仮説」を提唱しました。
シアノバクテリアは地球における生命の多様化と地球表層の酸化の起点となった重要な光合成生物であるものの、シアノバクテリアがクロロフィル(注1)の吸収する青や赤と相補的な緑の光を利用して繁栄してきた理由は分かっていませんでした。緑の光を光合成に利用するには、緑の光を吸収し、その光エネルギーをクロロフィルに渡す仕組みを獲得するとともに、その仕組みが優位に働く環境が必要であったはずだからです。
ここで本研究グループは、シアノバクテリアが誕生した太古代における水中の光環境に着目しました。太古代の貧酸素の水に溶け込んでいる二価の鉄(注2)が光合成によって発生した酸素によって酸化され、紫外線から青の光を吸収した結果、水中は緑の光であふれていたことが分かりました。生物実験および分子系統樹解析(注3)によって、シアノバクテリアが太古の緑の光環境で繁栄した可能性が明らかになりました。
光合成生物の活動によって生まれた緑の海は、紫外線を効率的に遮へいすることで生命を育む現場になったと同時に、遠くの惑星の生命の存在の指標にもなるかもしれません。
本研究成果は、2025年2月18日(日本時間)付科学雑誌『Nature Ecology & Evolution』に掲載されました。