大学プレスリリース2024.07.30
名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見 直人 講師は、マレーシアサインズ大学(マレーシア)、生態進化研究所(ロシア)、ブラネス高等研究センター(フランス)との共同研究で、ウミウシに擬態する新属新種のゴカイを三重県の菅島、和歌山県の古座、ベトナムで発見し、新属新種の記載を行い「ケショウシリス」と命名しました。
今回見つかった新属新種の「ケショウシリス」はサンゴの仲間であるウミトサカに住んでいます。共生性の生物は通常は宿主に溶け込んで目立たないような色彩になりがちですが、ケショウシリスは宿主であるウミトサカとは全く異なる色彩や形をしており、溶け込むというよりは逆に目立ってしまうような状況でした。
そこでケショウシリスの周辺に生息するウミウシを調べたところ、それらに良く似た形や色をしていることが分かりました。ウミウシには毒をミノと呼ばれる部分に保持して外敵から身を守る種が知られています。ケショウシリスもウミウシのミノのように大きくなった触手をもち、触手の先端の模様もミノの模様にそっくりです。ケショウシリス自体はウミウシのような毒を触手には保持していませんが、毒をもつウミウシに擬態することで、自身も危険であると外敵に認知させ食べられることから逃れていると考えられます。ウミウシに擬態するゴカイは世界で初めての発見です。
本研究を元に、生物において興味深い現象である「擬態」がどのように進化してきたのかが明かされていくことを期待します。
本研究成果は、2024年7月29日18時(日本時間)付Nature & Springer Publishingが発行する国際査読付き雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。